自家用電気工作物の設置・更新で必要な届出・法令手続きとは?

はじめに

高圧受電設備や非常用発電設備などの自家用電気工作物を新設・更新するときには、設備工事だけでなく、電気事業法に基づく届出や手続きが必要となる場合があります。

しかし、設備管理を担当されている方からは、

「どのような届出が必要なのか分からない」
「保安法人にはいつ相談すればよいのだろう」
といったご相談をいただくことも少なくありません。

実際には、工事の内容や設備の種類によって必要となる手続きは異なり、設備所有者・電気工事会社・保安法人・電力会社がそれぞれ役割を分担しながら進めていくことになります。

また、工事の直前になって届出が必要と分かると、受電開始の日程に影響する場合もあります。
そのため、設備更新の計画段階から確認しておくことが大切です。

この記事では、自家用電気工作物を設置・更新する際に必要となる主な届出や手続きを、設備オーナーや設備管理担当者の方向けに分かりやすくご紹介します。

この記事で分かること
自家用電気工作物とは何か
設置・更新時に必要となる主な手続きの流れと一覧
各手続きの目的と設備管理者が押さえておきたいポイント

目次

自家用電気工作物とは

まず、自家用電気工作物とは何かを簡単に整理しておきます。

電気工作物は大きく

  1. 一般用電気工作物
  2. 自家用電気工作物

の二つに区分されます。

一般用電気工作物は一般家庭や小規模店舗などで使用される100V・200Vの低圧設備が中心です。

これに対し、自家用電気工作物は、

  • 高圧受電設備
  • 特別高圧受電設備
  • 非常用発電設備
  • 太陽光発電設備(出力50kW以上)
  • 蓄電池設備(近年増えている低圧系統用蓄電所を含め、自家用電気工作物に該当するもの)

などが該当します。

これらの設備は、特別高圧・高圧で規模も大きく事故が発生した場合の影響が大きいため、電気事業法に基づき適切な設計・施工・維持管理が求められています。

また、多くの設備で電気主任技術者による保安管理が必要となり、外部委託している事業場も少なくありません。

自家用電気工作物の設置・更新時に必要となる主な手続き

設備の設置や更新では、工事そのものだけでなく、法令に基づく届出や検査などの手続きも重要な工程の一つです。

ただし、すべての設備で同じ手続きが必要になるわけではありません。
設備の種類や工事内容によって必要となる手続きは異なります。

まずは全体の流れを確認したうえで、代表的な手続きを一覧で見ていきましょう。

フロー:設備更新・新設時の一般的な手続きの流れ

ステップ
設備更新・新設を計画

設備の更新内容やスケジュールを整理します。

ステップ
保安法人・施工会社へ相談

工事内容や必要な法令手続きについて確認します。

ステップ
必要な法令手続きを確認

工事内容に応じて必要な届出や検査を整理します。

ステップ
工事計画届出(対象となる場合)

主な対象

  • 特別高圧受電設備の新設
  • 出力2,000kW以上の太陽光発電所の新設
ステップ
工事施工・試験・調整

完成後の試験や調整を実施します。

ステップ
保安規程の変更(必要に応じて)

主なケース

  • 発電設備の増設
  • 保安管理体制の変更
ステップ
電気主任技術者の選任・変更(必要に応じて)

主なケース

  • 選任者の変更
  • 外部委託への変更
ステップ
使用前自主検査(対象となる場合)

主な対象

  • 特別高圧受電設備
  • 出力2,000kW以上の太陽光発電所
ステップ
使用前自己確認(対象となる設備)

主な対象

  • 太陽光発電所(10kW以上2,000kW未満)
ステップ
受電・運転開始

ステップ
保安管理開始

定期点検や保安管理業務を開始します。

本フローは設備更新・新設時の一般的な手続きの流れを示したものです。
「対象となる場合」「対象となる設備」「必要に応じて」の主な対象は代表例であり、実際に必要となる手続きは設備の種類や工事内容、法令の適用区分によって異なります。

現場ワンポイント

ー 積雪なども考慮し余裕を持って計画 ー

当社が外部委託保安管理を担当している岩手・青森・秋田・宮城の各県では、積雪や天候により、工事や停電作業の日程が影響を受けることがあります。
法令上の手続きには提出期限が定められているものもあるため、工事日程だけでなく、届出や検査の日程にも余裕を持って計画することが大切です。

一覧:設置・更新時に必要となる主な手続き一覧

前項でご紹介した流れの中で、設備管理者が押さえておきたい代表的な手続きを一覧にまとめました。
工事の計画段階で確認しておくことで、届出漏れや工程の見落としを防ぎやすくなります。

手続き・届出主な対象手続きのタイミングポイント
工事計画届出
(対象となる場合)
特別高圧受電設備の新設
出力2,000kW以上の太陽光発電所の新設
工事着手前対象となる工事は法令で定められています。工事内容によっては、届出後一定期間を経過してから着工できる場合があります。
使用前自主検査
(対象となる場合)
特別高圧受電設備
出力2,000kW以上の太陽光発電所
工事完了後・使用開始前設備全体が技術基準に適合し、安全に使用できることを設置者が確認します。
使用前自己確認
(対象となる設備)
太陽光発電所(10kW以上2,000kW未満)使用開始前対象設備では、技術基準への適合状況を設置者が確認し、必要な手続きを行います。
保安規程の変更
(必要に応じて)
発電設備の増設
保安管理体制の変更
設備変更時設備更新や保安管理体制の変更に伴い、保安規程の見直しや変更届が必要となる場合があります。
電気主任技術者の選任・変更
(必要に応じて)

外部委託への変更
選任・変更時選任者や外部委託先の変更などに伴い、選任・変更手続きが必要となる場合があります。
その他の関係法令手続き
(必要に応じて)
工事内容に応じて工事計画時に確認消防法、PCB関連法令、環境関係法令などに基づく手続きが必要となる場合があります。

本表は代表的な法令手続きをまとめたものです。
実際に必要となる手続きは設備の種類や工事内容によって異なります。
詳細は関係法令や所管行政機関、施工会社、電気主任技術者や保安管理業務の委託先へご確認ください。

現場ワンポイント

ー 自主的に電気試験が行われることも ー

記事作成時点では、低圧系統用蓄電所に使用前自己確認は法令上義務付けられていません。
しかし、リチウムイオン電池を使用する設備であることから、安全性の確認を目的として自主的に各種電気試験を実施して引き渡される事例も多く見られます。

代表的な手続きを詳しく解説

前項では、自家用電気工作物の設置・更新時に必要となる手続きの全体像をご紹介しました。

ここからは、それぞれの手続きについて、目的や対象となるケース、設備管理者として押さえておきたいポイントを順番に解説します。

なお、実際に必要となる手続きは設備の種類や工事内容によって異なります。
ここでは、多くの設備更新工事で関係することが多い代表的な手続きを取り上げます。

工事計画届出

工事計画届出とは、一定の自家用電気工作物について、工事を開始する前に工事内容を国へ届け出る制度です。

設備の構造や安全性が電気事業法の技術基準に適合しているかを事前に確認する目的があります。

例えば、

  • 特別高圧受電設備の新設
  • 法令で定められた対象設備の新設・変更工事

などでは、工事計画届出が必要になる場合があります。

届出の対象となる設備や工事内容は法令で定められており、すべての工事が対象になるわけではありません。

また、提出後すぐに工事が開始できるものと、一定期間を経過してから工事着手となるものがあるため、工程計画にも影響します。

工事が決まってから慌てるのではなく、設計段階から電気主任技術者や保安管理業務を受託している管理技術者へ相談しておくと安心です。

使用前自主検査

設備が完成した後は、その設備が設計どおり施工され、安全に使用できる状態であることを確認するため、使用前自主検査を実施します。

これは完成後の設備について、

  • 技術基準に適合しているか
  • 正しく施工されているか
  • 安全に運転できる状態か

を事業者自ら確認する重要な検査です。

実際の検査では、

  • 外観確認
  • 絶縁抵抗測定
  • 接地抵抗測定
  • 保護継電器試験
  • 動作確認
  • シーケンス試験

など、設備に応じた各種試験・確認を実施します。

検査結果は記録として保存し、必要に応じて提示できるよう管理しておくことも重要です。

なお、「使用前自主検査」は設備の完成後に実施する検査であり、メーカーが製品出荷時に行う品質検査とは目的が異なります。

試験成績書との違い(補足)

「試験成績書」と「使用前自主検査」は混同されがちですが、目的や役割は大きく異なります。違いを整理すると、次のようになります。

比較項目試験成績書使用前自主検査
目的機器単体が仕様どおり製作されていることを確認する設備全体が安全に使用できる状態であることを確認する
対象変圧器、受配電盤、保護継電器などの機器単体設置された設備全体
実施者メーカー・製作会社設置者(事業者)
※実務では施工会社や関係者と連携して実施することが一般的
実施場所工場(出荷前)設置現場(工事完了後)
確認内容製品の性能・品質・仕様への適合技術基準への適合、施工状況、各種試験結果、安全性
実施時期製品出荷前使用開始前
法令上の位置付けメーカーが品質を証明する書類電気事業法に基づき対象設備で実施される検査
代替できるか使用前自主検査の代わりにはならない試験成績書の代わりにはならない

試験成績書は「製品」の品質を確認する書類、使用前自主検査は「設備全体」の安全性を確認する検査です。

使用前自己確認

使用前自己確認は、一定の法令で定められた対象設備について、使用開始前に設置者が設備の技術基準への適合状況を確認する手続きです。

「使用前自主検査」と名称が似ていますが、対象となる設備や制度上の位置付けは異なります。

そのため、設備によっては使用前自己確認が必要となる一方、対象外となる設備もあります。

太陽光発電設備や蓄電池設備などは、制度改正により対象設備が拡大されているため、工事計画の段階で最新の制度を確認することが大切です。

判断に迷う場合は、施工会社や電気主任技術者、保安管理業務の委託先へ早めに相談すると安心です。

使用前自主検査との違い(補足)

比較項目使用前自己確認使用前自主検査
主な対象低圧・高圧の小規模設備高圧・特別高圧の大規模設備
主な検査内容設備の電気的な安全性の確認電気的な安全性に加え、運転性能や制御動作などの総合的な確認
法的義務対象設備では義務義務
現場ワンポイント

ー 太陽光発電設備は「小規模だから対象外」とは限りません ー

太陽光発電設備は、設備の種類や規模によって適用される制度が異なります。
近年の法改訂で、10kW~の小規模太陽光発電所でも使用前自己確認が必要になっていますので、注意が必要です。

保安規程の変更

保安規程は、自家用電気工作物を安全に維持・運用するための基本的なルールを定めたものです。

受電設備の更新や発電設備の新設などにより設備構成や保安管理体制が変わる場合には、保安規程の変更が必要となることがあります。

例えば、

  • 太陽光発電設備を増設した
  • 蓄電池設備を導入した
  • 設備構成が大きく変更となった
  • 保安管理体制を見直した

といったケースでは、保安規程の内容も実態に合わせて見直すことが重要です。

設備だけを更新し、保安規程が以前のままになっていないかも確認しておきましょう。

電気主任技術者の選任・変更

自家用電気工作物を設置する事業場では、電気事業法に基づき電気主任技術者を選任することが必要です。

電気主任技術者は、設備の維持管理や保安監督を担う重要な役割を果たします。

設備更新に伴って、

  • 保安管理体制を変更する場合
  • 外部委託先を変更する場合
  • 電気主任技術者が交代する場合

などには、必要な届出や手続きが発生することがあります。

その他の関係法令手続き

自家用電気工作物の設置・更新では、電気事業法に基づく手続きだけでなく、設備の内容によっては他の法令に基づく届出や手続きが必要となる場合があります。

例えば、次のような法令が関係することがあります。

消防法

非常用発電設備や蓄電池設備などでは、消防署への届出や検査が必要となる場合があります。

PCB特別措置法など

古い変圧器やコンデンサを更新する際は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)含有機器の有無を確認することが重要です。
PCBが使用されている場合は、保管や処分について法令に基づく対応が必要となります。

大気汚染防止法・騒音規制法などの環境関係法令

非常用発電設備や一部の設備では、地域や設備規模に応じて環境関係法令に基づく届出や規制の対象となる場合があります。

これらの手続きは、設備の種類や規模、設置場所などによって適用される法令が異なります。
また、自治体独自の条例が関係する場合もあります。

工事計画の段階で、施工会社や電気主任技術者、保安管理業務の委託先とあわせて確認しておくことで、届出漏れや工事の手戻りを防ぎやすくなります。

現場ワンポイント

ー 長年使用してきた設備の更新はPCBが使用されていないかも要確認 ー

長年使用してきた設備の更新では、古い変圧器やコンデンサにPCBが使用されていないかを早めに確認しておくと、その後の計画を立てやすくなります。

設備管理者向けチェックポイント

ここまで、自家用電気工作物の設置・更新時に必要となる主な手続きについてご紹介しました。

最後に、設備管理者の立場で特に確認しておきたいポイントをチェックリスト形式で整理します。
工事の計画段階から確認しておくことで、手続き漏れや工程の遅れを防ぎやすくなります。

更新時チェックリスト

設備更新や新設工事を予定している場合は、次の項目を確認してみましょう。

  • 工事計画届出の対象設備か確認した
  • 必要な法令手続きを事前に整理した
  • 使用前自主検査の実施予定を確認した
  • 必要な試験・測定項目を把握している
  • 試験成績書や完成図書を受領する予定になっている
  • 保安規程や管理体制への影響を確認した
  • 工事後に必要な記録を適切に保管できるよう準備している
  • 電気主任技術者や保安法人へ事前に相談した
  • 工事後の関係書類の保管方法を確認した

一つひとつは難しい内容ではありませんが、工事着手前から意識しておくことで、手続き漏れや工程の遅れを防ぐことができます。

書類の保管と立入検査への備え

工事が完了し、設備の運転を開始した後も、関係書類は適切に保管しておく必要があります。

例えば、

  • 工事計画届出関係書類
  • 使用前自主検査記録
  • 試験成績書
  • 完成図面
  • 単線結線図
  • 保護継電器試験結果
  • 保安規程
  • 点検・試験記録

などは、設備の維持管理において重要な資料となります。

また、経済産業省(産業保安監督部)では、必要に応じて自家用電気工作物の立入検査を実施することがあります。

立入検査では、設備そのものだけでなく、

  • 保安規程に基づいた運用が行われているか
  • 点検・試験記録が適切に保管されているか
  • 法令で必要な手続きが行われているか

なども確認されます。

日頃から関係書類を整理し、必要なときに提示できる状態にしておくことが、円滑な対応につながります。

まとめ

以上、自家用電気工作物の設置・更新時に必要となる法令手続きについて、全体を俯瞰するとともに、代表的な手続きのポイントを解説しました。

法令手続きでお困りの際はお気軽にご相談ください

匡電気管理事務所では、岩手県を拠点に青森・秋田・宮城を含む東北エリアで、自家用電気工作物の保安管理に加え、設備更新時の法令手続きに関するご相談も承っています。

届出の要否や保安管理についてご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

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